何気ない会話を交わしていると、
「そろそろ、移動しましょう。」
ストレッチャーを押しながら、
看護婦さんが病室にやってきました。
ストレッチャーに移動した折目さんに、
付き添い、共に手術室に向かいました。
手術室の前には、義父と義母が椅子にかけ、
待っていました。
看護婦さんが、
「行きましょうか…」
と、声をかけた時に、折目さんが口を開き、
前回と同じ言葉を発したのです。
「ここで、待っててくれ!」
私は、
「うん、待っとくよ!」
と告げ、折目さんの手をしっかり握りました。
義父と義母もしっかり握られました。
その姿に、思わず…
『一人息子の生きるか死ぬるかに立ち会う
おとうさんとおかあさん…本当に可愛そうです!
どうかどうか神さま、助けてください!お願いします。
更には、
前回のような急変が決して起こりませんように!
お願いします。お願いします。』
と、心の中で叫びながら必死に
手を合せつつ、 義父と義母の背中を眺めました。
そして…
折目さんを乗せたストレッチャーを手術室に見送ったのでした。